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不機嫌ハラスメント:メンタルヘルスへの影響と対策

  • 執筆者の写真: Tucksky
    Tucksky
  • 2023年9月13日
  • 読了時間: 5分

はじめに

厚生労働省では、「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの 職場内の優位性を背景に、 業務の適正な範囲を超えて、 精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」と定義しています。ですが、ハラスメントは職場以外でも発生し、その種類は年々細分化される傾向にあります。

今回は、不機嫌ハラスメントに焦点をあて、その影響や対策についてお伝えします。



不機嫌ハラスメントそのものは昔から存在していますが、不機嫌なのは本人の気持ちの問題ととらえられることが多く、不機嫌さが引き起こす雰囲気や行動が他者に良くない影響を及ぼす事実には、あまり目が向けられていませんでした。しかし、誰かの不機嫌さが別の誰かのメンタルヘルス不調に繋がっていることが明確になる事例が増え、不機嫌ハラスメントそのものが注目されるようになりました。



不機嫌ハラスメントの定義

不機嫌ハラスメントは、意図する、しないに関わらず、他人の気分や感情にわざと影響を与える行為です。これは、家庭内、学校、仕事場やオンラインなど、様々なコミュニティで発生します。機嫌が悪いときに、無視をする、否定的なメッセージを発信する、大きな音を出したり、威圧的な態度を取ったりして、周囲に不快感や精神的苦痛を与えます。

そのため、不機嫌ハラスメントを受けると、不安や抑うつなどのメンタルヘルスの問題に直面する可能性があります。加えて、不機嫌ハラスメントの加害者のメンタルヘルスにも悪影響を及ぼします。


不機嫌ハラスメントの影響

不最も明白なのは、不安感や、抑うつ症状の増加です。被害者は自尊心を失い、社会的孤立感を抱くことがあり、これがさらなる精神的な苦痛を引き起こします。また、生産性を低下させ、仕事や学業に悪影響を及ぼす可能性があります。

長期間にわたるハラスメントは、深刻なメンタルヘルスの問題を引き起こす可能性があります。


不機嫌ハラスメントをする人の本音

不機嫌さを表す行動は、威圧的で、その場を支配しているように見えますが、その行動の裏には、

・この場にどう対応すれば良いか分からない。

・自分の気持ちを上手くコントロールできない。

・自分が下だと思われたくない。

・自分のことを分かって欲しい。

・自分の非を認めたくない。

「だから、私の状況を察して、あなたが行動を起こしてね。」という気持ちが隠れていることがあります。

視点を変えてみると、本当に伝えたいことを周囲に伝えられずに、不機嫌さを表すという行動を取るしかない状況にあるともいえます。

私たちは、本当に伝えたい気持ちを伝えられないとき、別の気持ちが生まれることがあります。もしかしたら、不機嫌さを表現する人は、本当に伝えたいことを周囲に伝えられない状況にあるのかもしれません。

とはいえ、不機嫌ハラスメントを受ける側としては、なるべく被害に遭いたくないものです。


不機嫌ハラスメントへの対策

不機嫌ハラスメントに対処するためには、その人から距離を置くのが一番です。しかし、相手が家族や同僚の場合、距離を置くのが難しいことがあります。

その場合には、個人間のコミュニケーションを見直す必要があります。

不機嫌ハラスメントをする側の人の多くは不機嫌になる場を選択しています。

Sさんは、地域のイベントに積極的に参加し、会社では信頼できる上司として人気者です。しかし、家での印象は全く違います。子どもたちがうるさくすると、テーブルを叩いたり、テレビの音量を必要以上に大きくします。食事の味が気に入らない時には、食事には手を付けず、大きな溜息をつきながらカップラーメンを作り始めます。

家以外の場所でもSさんにとって嫌なことや気に入らないことは起こっているはずですが、外ではそのようなそぶりを見せることはありません。

Sさんはカウンセリングの際に、「家族だから自分を分かってくれると思った。」とおっしゃっていました。そして、自分が家族に取った態度は、会社や家族以外の人がいる場所では、「してはいけないこと」との認識をお持ちでした。

Sさんに限らず、不機嫌な態度を取ることで、妻や子どもが自分の機嫌を取ってくれる、思い通りに動いてくれる、といった間違ったコミュニケーション方法が確立されてしまうと、意図的に不機嫌さを出して周囲をコントロールするようになります。

そうなる前に、相手の不機嫌さには付き合わないというコミュニケーションスタイルを確立するのが理想的です。

余談ですが、うちの実家の猫は、病院から帰ると不機嫌さを前面に出しておやつをもらいます。



対話の重要性

さきほど登場したSさんは、自分の行動をふり返って次のようにおっしゃっていました。


「子どもたちも自分の両親も、妻ばかりに頼り、妻には、ありがとうと言います。でも、僕はいてもいなくてもいい感じで、(家庭内で)存在感がないというか、嫌われているような、そんな風に感じていました。なので、仕事で疲れている、明日も仕事だと、仕事を言い訳に家族と距離を取るようになり、気が付くと家の中で孤立していました。ですが、父親の威厳だけは守りたいと思っていました。」


Sさんは自分の行動を見直し、家族に正直な気持ちと謝罪を伝えました。

Sさんの妻は、これまで夫への感謝の気持ちを言葉にしていなかったことを反省し、ご自分の想いを言葉にしてSさんに伝えました。子どもたちも、本当はSさんと遊びたかったけれど嫌われていると思っていた、Sさんの行動が怖かったと、素直な気持ちを伝えました。

それぞれが自分の気持ちを伝えあったことで、お互いの誤解が解け、家族の絆が深まったとおっしゃっていました。

Sさんは以前のような行動を取ることは無くなり、カウンセリングから1年以上経った今も、ご家族は仲良く過ごしているそうです。


実際にこのように対話を実施するのは難しいと思いますが、対話をすることで状況が変わることがあります。嫌な態度を取ってしまうとき、嫌な態度を取られたときに、相談できる人や場所を確保しておくと、自分の心を守るお守りとなります。



おわりに

不機嫌ハラスメントは、加害者にも被害者にも深刻なメンタルヘルスの問題を引き起こす可能性があるため、早い段階でその対策に取り組むべきです。

不機嫌ハラスメントを許容せず、共感と尊重の文化を促進することは、より健康的な社会を築くために不可欠です。メンタルヘルスを大切にするためにも、不機嫌ハラスメントをしない、させないコミュニティ作りを目指したいものです。




 
 

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