多様性という名の画一性
- Tucksky
- 2023年8月16日
- 読了時間: 3分
現在、企業や組織内でのDiversity & Inclusion(D&I)の推進は、組織単体ではなく、業界全体や国全体の取り組みとしても重要視されています。多様なバックグラウンドや経験を持つ人々が組織内で尊重され、公平なチャンスを享受できることは、経済の成長、社会の成熟につながります。

しかしながら、逆にD&Iを推進する過程で、意図せず本来の多様性を失ってしまうケースが増えてきています。多様性を推進していたはずなのに、気が付くと、画一性を強化しているということもあります。
本来、多様性とは異なるものが集まっている様子を表します。
多様性を推進するあまり、異なるものを創り出したり、集めたりするのは、本来の多様性ではありません。
多様性の推進が生み出す問題
異なる人々の価値観や能力を組織内に取り入れることによって、新たなアイデアや視点が生まれ、組織の革新力を高めることができます。しかし、異なる人々や価値観、能力を組織内に取り入れることが目的となり、社会のトレンドに合わせた多様性のイメージを組織全体が共有することで、本来の多様性が失われるという問題が生まれることがあります。
例えば、
・「女性活躍」を実施するために、新たなポジションを作って女性役員を増やす。
・LGBTQへの理解を深めなければならないので、年に2回、研修を実施する。
これらは一見、多様性を推進しているようですが、「こうでなければならない」という画一的な考えが隠れています。
これまで男性のみで構成されていたチームに女性が入れば、多様化が進んだと認識できます。研修を実施すると、多様性を推進していると実感できるでしょう。
組織にとって、このような見える結果は大切です。
ですが、表面的な多様性は、多様性のある組織を作らなければならないという画一性を生み出しています。
多様性を推進するためには、単に外見や背景の異なる人々を組織内に取り入れるだけでなく、異なる考え方やアプローチを受け入れ、尊重する文化を築くことが必要です。
しかし、一部の組織では、外部からのプレッシャーやトレンドに追随する形で、特定の属性や背景を持つ人材を重点的に採用しようとする傾向が見られ、その結果、多様性という名のもとに逆に画一的な組織文化が形成されつつあるのが現状です。
画一化への対策
多様性の画一化を防ぐには、次のような対策が有効です。
真の多様性の理解と尊重
D&Iの推進は単なる数字の追求ではなく、異なるバックグラウンドや視点を持つ人々が意見を出し合い、尊重しあう文化を創り出すことが重要です。経歴やスキルだけでなく、価値観や考え方の多様性も尊重し、組織の中で活かす取り組みが必要です。
カルチャーフィットの重要性
組織は、共通の目標を達成するために協働する人たちの集まりです。そのため、その目標によって、または、目標の達成手段は組織によって異なります。そのため、組織ごとに独自の文化が存在します。その組織文化を大切にしながら、人材と組織文化との適合度も重視することが大切です。組織の目標や文化と合致しない人材が組織に参加することで得られる多様性もありますが、逆に違和や摩擦を生むことがあります。
教育と意識啓発
組織内でD&Iに関する教育やトレーニングを行うことで、多様性を理解し、尊重する姿勢を養うことができます。まずは、言葉としての「多様性」ではなく、他者の異なるバックグラウンドや経験をありのまま受け入れる必要性を学び、次のステップでは、その違いに興味を持ち、ポジティブに捉える文化が醸成されるようなアプローチが理想です。
これらの対策を通じて、D&Iの推進が単なる表面的な多様性の追求に終わるのではなく、本来の多様性を尊重し、組織内で豊かな文化を築くことが可能となります。