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幼児期から始める包括的セクシュアリティ教育

  • 執筆者の写真: Tucksky
    Tucksky
  • 2023年6月17日
  • 読了時間: 5分

幼児期に包括的セクシュアリティについて学ぶことは、彼らが自分と他人を理解し、尊重するために重要なことです。



自分の体や他人の体に興味を持ち始める3歳頃になると、子ども自身が自分の体のあちこちを触ったり、自分とは違う見た目に疑問を持ったりするようになります。

この頃に正しい知識を身につけることは、子どもの権利の一つです。



性知識の第一歩は体の部位の正しく知ること

私が幼児教育にたずさわっていた頃、子どもたちのほとんどが男性器の呼び名「おちんちん」を知っていましたが、女性器の名前を知っている子どもはほとんどいませんでした。

この減少は日本だけでなく、世界的に同じような現象が見られます。

外から見える男性器は認識しやすいものですが、女性器は見えにくいこともあって、その存在は秘密のベールに包まれているようです。

加えて、女性の性についてはあまりオープンにしてはいけない、触れないほうが良いといった風潮が強く、性器周辺をひっくるめて、「おまた」と表現したり、特定の名前をつけてもらったりしています。

このような遠回しな表現は、「あなたは知らなくても良いこと」、「あなたが知ってはいけないこと」という子どもへのメッセージとなることがあります。

直接的な名称を伝えるかどうかは別として、手や足などの体の部位の名称を覚える時期になったら、女の子の「おまた」には、尿道、外陰部、膣口があること、男の子の「おまた」には、陰茎、睾丸、陰嚢があることを知っておいて欲しいと思います。



プライベートゾーン

自分の体の中でも、下着とマスクで隠れる部分は特に大切であることは幼少期の子どもに伝えたいことの一つです。プライベートゾーンは体の内部と直接つながっていて、とてもデリケートな部分です。乱暴に扱うことがあれば命に関わることがあります。

だからこそ、自分の体の中でも特別なところであり、自分のプライベートゾーンを守ること、他人のプライベートゾーンを守ることのどちらも大切であることを幼少期から知っておく必要があります。この知識は自分も他人も大切にする素地となります。


イラスト megkmitさん




包括的セクシュアリティ教育とキャリア形成の関係

自己のキャリア形成を支えるために行われるキャリア教育では、基礎的・汎用的能力として、「人間関係形成・社会形成能力」「自己理解・自己管理能力」「課題 対応能力」「キャリアプランニング能力」の4領域の育成に重点を置いています。これら4つの領域の全てに、性に関する知識が必要となります。


人間関係形成・社会形成能力

多様な他者の考えや立場を理解し、受け止め、自分の考えを正確に伝えることができる。

⇒人を好きになる、お付き合いをする、お別れする、他者を大切にする


自己理解・自己管理能力

自分の気持ちを自分が理解する、自分のしたいことやしたくないことについて理解し、管理することができる

⇒自分が主体となって、交際や性交渉、妊娠、出産について考える


課題 対応能力

いまやるべきことを見極め、適切に計画を立てる

⇒交際や妊娠、出産などの課題に向き合い、自分が対応できるかどうかを見極め、計画を立てる


キャリアプランニング能力

社会人として、職業人として、自分が果たすべき立場や役割を理解する

⇒自分や相手の立場、子ども、大人、親などの役割を理解した行動ができる


結婚する・しない、子どもを産む・産まないだけでなく、幅広く性に関する知識を持つことは、自分らしいキャリア形成に大きな影響を与えるのですが、これまでの歴史の中では、性に関する知識は自然発生的に理解するものである、道徳的に考えるものであるといった考えが主流で、時には、性的なモノに関心を持つことは恥ずかしいことであると認識されることもありました。しかし、社会の変化や人々の意識の変化に伴い、性に関する知識の大幅なアップデートが求められるようになり、包括的セクシュアリティ教育という概念が生まれました。




包括的セクシュアリティ教育

ユリー・ブロンフェンブレンナーは、人間の発達過程は、個人と環境との相互作用によって形成されるもので、生まれ持った生物学的要因は個人の基礎的な能力を形成するものにすぎず、その能力の発現や発達度合いは、環境や社会の影響をされると提唱しました。

実際、私たち人間は、家庭、学校、職場、地域など、様々な場所で生活し、様々な人と出会い、互いに影響を与え合っています。

セクシュアリティ(性的特質・性的興味)は、生物学的性別、性自認、性別役割、性的指向によって構成されます。これらの要素は、社会で生きていく上で切り離すことができません。


自分と自分を取り巻く環境との相互作用とセクシュアリティについて包括的に学び、活用するのが包括的セクシュアリティ教育です。性差や性行為についての学びに加えて、多様性についての理解、ITリテラシーなどを幅広く学びます。



幼児期からセクシュアリティ教育を取り入れる必要性

ここでは、幼児期からセクシュアリティ教育を取り入れるメリットを3つご紹介します。これらのメリットは、生涯に渡って人生の支えとなります。


1.気軽に性に関する話ができる関係性が構築しやすい

大人側からすると、子どもがある程度の年齢になってからの方が話しやすいこともあるでしょう。しかし、幼少期に「関わってはいけないもの」と認識したことを大人と話すことに抵抗を感じる子どもは少なくありません。その結果、体調の変化や、性被害を受けたことを大人に話すことができずに、一人で抱えこんでしまうことがあります。

2.嫌なことを認識できる

自分の体についての知識がない状態で、性的ないたずらを受けても、それがいたずらかどうかを子ども自身は判断できません。もし嫌だと思っても、悪意を持った誰かの、「これは二人だけの秘密だよ。」「これは君の体の悪いところを治すためにやっているんだよ」という言葉を信じてしまう可能性があります。自分の体には誰かが勝手に触ってはいけない部分があること、そしてその理由も学んでおくことは自己防衛になります。

3.性に関する権利を身につけられる

生まれた時から、本人の体は本人のものです。周囲の大人が子どもの権利を守る姿勢で子どもに接すれば、子どもは自然と自分の体の大切さを学びます。それと同時に、他人の体はその人のものであると認識することができるようになります。

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